「赤い楯の紋章」

1904年2月8日、日本海軍の仁川、旅順におけるロシア艦隊への奇襲攻撃に始まった日露戦争、その戦費として調達した17億1600万円では、戦争継続は長くて1年しかなった。
だがこうした17億円余りの戦費も、そのかなりの部分を欧米列強からの借金でまかなおうとしていた日本政府は、当然といえば当然だが国際社会からの信用が得られず、当初その戦費確保は絶望的になっていた。

しかしここにある後ろ盾が現れ、日本が発行した外貨建て国債を引き受けることになり、このことが信用となって日本は国際社会から外貨を集めることに成功したが、この背後には意外な名前が浮き上がってくる。
ニューヨークの銀行家ジェイコブ・シフ、彼は日本の外貨調達に支援を申し出るが、新興国も甚だしい日本が大国ロシアと戦争しようと言う訳だ、どう見ても日本には勝ち目がなく、そんなところに金を貸してもドブに金を棄てることになる・・・と思われていた国際情勢の中、なぜジェイコブは日本支援に動いたのだろうか。

その答えはロンドンのロスチャイルドが影で動いていたからである。
ロスチャイルドは同じユダヤ系のジェイコブを動かし、日本の資金調達を支援する体制を取った、そしてこうした背後の勢力のおかげで、信用が増した日本の外貨建て国際は募集に成功したが、ではなぜロスチャイルドが・・・と言うと、ここには現在のアメリカにも通じる利益本位主義的な思考形態がある。

すなわち戦争当事国への双方投資であり、ロスチャイルドは、この頃から世界的注目が集まりかけていた「石油」調達のためにロシアへも投資していて、万一日本が負けても石油で利益を上げる仕組みを作り、その上で日本にも投資をしているわけで、結果としてどうなったかと言うと、日露戦争でかろうじて勝利した日本は、ロシアからの金銭的賠償を求めることができなかったため、国債の金利をロスチャイルドに払い続けることになっていったのであり、この戦争で本当に利益を得たのは日本ではなく、実はロスチャイルドだったとされるゆえんがここにある。

今夜はよく聞く名前だが、その実何の会社なのか良く分からないロスチャイルド、ユダヤ資本について少し見てみようか・・・。

ロスチャイルドは16世紀末ドイツ、フランクフルトのユダヤ人隔離地区(ドイツ語でゲットーとも言うが・・・)で赤い盾を家の標識にしていた者がいて、この赤い盾のことを付近住民達がドイツ語でロートシルトと呼んだことに起源があるが、このスペルを英語読みすれば「ロスチャイルド」、フランス語では「ロチルド」となっていったのである。

創業者のマイヤー・アムシェル・ロスチャイルド(1743年~1812年)には5人の息子がいたが、長男のアムシェルをフランクフルトに置き、ザロモンをウィーン、カールをナポリ、ヤコブをパリに分家させ、ネイサン・ロスチャイルドはロンドンに置くという具合に支店を分散させた。

このうちネイサンは1803年事業所をロンドンに移し、フランスとの戦争拡大とともに、イギリス政府の金融事業に着手、イギリス政府は毎年2000万ポンドの国際を売っていたが、このような大金は市場でも直接吸収が難しく、そうした事情から公債の一部は、顧客を見つけた「公債販売請負人」に直接売り渡される仕組みになっていて、織物取引の為替手形によって高い信用と顧客を持っていたネイサン・ロスチャイルドは、この「公債販売請負人」のシンジケートに参加し、国債為替手形の引き受けもやっていたが、1815年の段階でロスチャイルドの資本は14万5000ポンドに達し、その内10万ポンドがネイサン・ロスチャイルドの資産だったと言われている。

さらにロスチャイルド家は手形を流通させるために、重要な金融に関するニュースを発信する、新聞社の経営まで行っている徹底ぶりだった。
そしてこのようにロスチャイルドがなぜ手形取引を重要視したかと言うと、ユダヤ人に対する迫害がこの当時すでに起こっていたからであり、その根底にはイギリスにロスチャイルドがあれば、敵対していたフランスにもロスチャイルドがある、彼らはわれわれの争いに乗じて利益を上げているのではないか・・・と言う見方があったからだ。

そしてこうした迫害や暴力に対して一番被害が少ないのが、万一すべて没収されても直接金銭がなくなるわけではない手形であり、こうした判断からユダヤ人社会では、外国の暴力から財産を守る方法として手形と言うものが重視されていた。

だがこうして一時は繁栄を極めたロスチャイルドだが、現在残っているのはロンドンのロスチャイルドとフランスのロチルドだけで、他は20世紀までに、ヨーロッパの政治経済の変動と、ユダヤ人迫害によって消滅している。

ただ、残ったロスチャイルドだが、多国籍企業へとさらに躍進し、巨万の富を集中させ続けていることは確かで、現在では南アフリカの同じユダヤ系、オッペンハイマー財閥とともに、金やダイヤモンドの国際価格を操れる存在にまでなっている。
金は事実上ロンドンにある通称「黄金の間」と呼ばれる場所での取引により国際価格が決まるが、これはロスチャイルドの本拠地N・M ・ロスチャイルド&サンズの中にあるのだ。

またこのほかの巨大ユダヤ資本だが、例えばダイヤモンドは、ベルギーのアントワープが世界のダイヤモンド加工と、取引の中心となっているが、この中心地区に住んでいるのはすべてユダヤ人であり、南アフリカのダイヤモンド王と言われるバーネイ・バルナート、それにロスチャイルドとも関係が深いアーネスト・オッペンハイマーは、世界屈指の宝石会社デビアスまでその手中に収めている。

このようにユダヤ人がなぜ宝石かと言えば、その背景にはやはり迫害の歴史があり、ダイアモンドであれば、万一のとき洋服に忍ばせても見つかりにくい・・・とした時代があって、そこから発展してきたものだとも言える。

またイスラエル建国時にイギリスがイスラエルよりだった背景にも、ロスチャイルドの資本を無視できなかったイギリス政府の苦しい胸のうちがあったのだが、現在オッペンハイマーやロスチャイルドは、イギリスとオランダの合弁会社を通じて、石油市場への参入にも力を入れているばかりか、背後にはアメリカを通じて軍事産業や食料市場への参入まで行っている。

我々の金が自分のものだと思ったらそれは少し甘いかもしれない、実は今我々の財布の中に入っている1万円札には、すべて見えない糸がついていて、ある日どこぞの誰かが糸を引くと、サッと飛んでいってしまうかも知れない・・・。