| ヨハネスブルグで溶接業を営むA・カリルは、ある日、ヨハネスブルグからベリーニングに続く主要道に沿って、約10kmばかり続いている1つの丘のふもとへ入る道に自動車を止めた。 客と約束した刻限までにはまだ時間がある、天気も良いことだし、道端に腰かけて外の空気を吸い、ついでに煙草も一服したかったので、ポケットから煙草を出して、火をつけたが、そのさい何気なくさっき止めた自分の車に目が行った・・・。 その瞬間、カリルの顔色はハッと変わり、持っていた煙草を放りだした。 すると自動車は後ろ向きのまま、またもや丘の頂上に向かって登り始めた・・・、この状況に、カリルはなんだか急におかしくなってしまい、1人でゲラゲラ笑い出してしまった。 「どちらの道からテストしますか・・・」 このニュースは当時世界的なニュースになったが、そうこうしているとフレンド紙へ、スコットランドから抗議の手紙が舞い込んできた。 またその坂は付近の人たちから「電気坂」と呼ばれ親しまれてはいるが、何か不思議な力が働いているわけではなく、全くの錯覚に過ぎない・・・、つまり丘の周囲を取り巻く田園風景と見比べたとき、その位置の変化で登っているように思い違えるだけだ、だからそもそも不思議でもなんでもないのだ…と、ご丁寧な解説まで付いていた。 これに対して「ザ・フレンド」紙の記者は反対の意見をスコットランドに送り、くだんの坂道は凄いでこぼこ道で、普通の坂ならブレーキなしでも十分自動車を停止させておける状態であり、またバケツに水を張った実験でも、その坂道は間違いなく見た目の方向に登って行く坂道であり、断じて錯覚ではないと主張した・・・が、スコットランドからは特段確認にも来ない割には、やはり「錯覚だ」と言う主張が繰り返され、その後もこのヨハネスブルグの坂道の不思議は、決着がつかないままになっている。 |