「越中富山の薬売り」

少しだけ登りになった道には暑さで逃げ水が立ち、蝉の声はこの時ぞとばかりに喧しくあたり一面に響き渡る。 そのもうおそらく老人と呼ぶべき年齢だろう男性は長年使い込んだ黒い時代遅れの自転車を押し、ときおり歩みを止めては首に下げ...